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ネギまSS第二話公開 [ネギま! SS]

 

 

見渡す限りの広大な荒野
草木は生えてなく、生命の息吹は感じられない
ただ、無機質な岩がその場を支配していた

はずだった

だが、今ここを支配しているのは人とは呼べぬ物達、すなわち魔物
それらはどこからとも無く無数に送り込まれていた
恐らく当の本人達も何故ここにいるのか解っていないのだろう
彼らに在るのは只一つ………殺気

 

 


       魔法先生ネギま!~龍の在る景色~

              第二話:急ぎの仕事

 

 

 

そんな地獄絵図を見渡せる小高い丘に『彼』はいた
身長は160半ば、黒い革のロングコートを着ている
しかし、何より印象的なのはその羽織っているコートの黒より遥かに『漆い』髪と眼だった
肩程まで伸びたその髪をかき上げると、先程から甲高い声で持ち主を呼び続けている携帯電話を手に取った

「こちらヴォルト、現場に着いたぜ」

ヴォルトと名乗ったその青年は眼下に広がる光景を見下ろしながら携帯の通話ボタンを押した

「それではとっとと始めて下さい、長期休暇を認める代わりに溜まってる仕事、全部片付ける約束でしたよね」

応えたのは女性の声だった
否、女性と言うよりは少女のそれに近い

「だからって、こんなに多いとは聞いてないぜ」
「まさか、長期休暇中の分の量が入っていないとでもお思いですか?」

電話の声は丁寧な口調ではあったが明らかに怒りが込められていた
無論彼もそれは感づいている
だが、電話の向こうの少女を怒らせるといくら社内で最強と言われている彼でさえ一たまりも無い
と、言っても彼は彼女の顔すら知らないのだが

「分かった、分かりました! 全部片付ければいいんだろ?」
「分かって下されば結構です、そう言えばこの後の予定ですが、一時間早まりましたから」

そう言われて彼は自らの左手の時計に目を向けた
その場に流れる一瞬の沈黙
時計の文字盤が指し示している時刻と元の予定時間から一時間引いた時刻とを結びつける

「やっべ!! あと一時間しかねぇじゃん! ちょっと、これ全部で何体いる?」
「ざっと五千体でしょうか、世界中の社員に強制転移魔法で送ってもらいましたからね…………って、もしもし?」

手に握られていた携帯は既にポケットの中にしまわれ、彼は再び地獄絵図を見下ろしていた
直後、コートの肩甲骨部分がうごめき出す
そのコートの繊維が徐々に分解し始め、露出される肩甲骨の肌
地獄絵図の中心に飛び込んだ彼から生えてきたそれは人の体には不釣合いな代物

「さぁ、Let's Party!!」

急降下した彼の背中に在るもの―――それは、龍の翼

 

 

 

 


 「ヴィル・ヘル ヴァ・ルハル ヴォルティクス」

彼は自らの『始動キー』を唱えた
言葉の鍵によって解き放たれた力が彼の周囲を飛び交う

 「炎の精霊287頭 集い来たりて敵を焼け………魔法の射手 炎の287矢!!」

彼の魔力が大気を燃やし、その炎が敵へと向かっていく
降り注ぐ炎の雨が敵を貫いてゆく
矢に貫かれる者、炎に焼かれる者、自らの死にすら気付かぬ者
それらを焼いた炎は地面を燃やし、尚消えることは無い
そんな地獄絵図にさらに磨きをかけた張本人がその中心へと降り立った


「とりあえず俺様降臨っと」

不適な、しかしそれでいて何処か爽やかな笑みを浮かべている彼は周りを見て呟いた
一気に加速した彼はその雑踏の中に自らの身を投じた
魔の物を狩るその姿は周りの炎とあいまって龍と言うよりもむしろ鬼神と言うに近い
しかし、荒々しくもその殺戮は美しき舞の様でもあった
決して止まる事無く、流れる様な殺戮
血が舞い肉が跳ぶ『それ』を彼は不気味なほど爽やかな笑みを浮かべながら楽しんでいた

「あと五十分で二千体か…………」

そう呟きながらも彼は攻撃の手を緩めることは無かった
否、むしろ体が戦いを憶えているかのようだった
それはまるで幾百年もの時間をかけて染み込ませた舞
しかし、彼の舞を満足させるには今回のダンスパートナーは少々役不足だった

「死ぬ気で来い、じゃねぇと殺すぞォ!!」

彼の誘いに対してもパートナー達はそのパラドックスの矛盾に気付く間もなく舞の舞台からの降板を余儀なくされた
そうしていく内に相手の数は見る見るうちに減って行き、遂には100体前後になっていた

 

 

 

「若造、調子に乗っているようだがそうは行かんぞ」

突如、予定外の参入者が彼の舞を止めた
銃のような武器を抱えた赤く巨大な魔物
その目は標的を捉え、殺意に満ちていた
口は大きく裂かれ、そこには敵を食らわんとする牙が規則正しさとは無縁の配列で並んでいた

「ほぉ……その魔力、Sクラスの魔物か
  やっと手応えがありそうな奴が来たな」
「そんな事を言っていられるのも今の内だぞ、若造」
「そいつぁ面白い、存分に楽しませてくれよ」

直後、銃口が彼に向いていた
そのまま引き金を引けば間違いなく頭部に命中するだろう
しかし、彼は微動だにせず、むしろ笑みを浮かべている
無論、恐怖ではなく自信の表れだ
だが、この程度のハッタリ合戦は戦場ではよく在る事、双方全く気にしていない
突如彼は魔物に尋ねた

「ところで、あんた何歳だ?」

戦場の会話にしても、もしくは世間話ですら見ず知らずの相手には突然訊かないであろう質問
その質問が気に食わなかったのか顔をしかめる魔物
だがしかし、すぐにその人間とは大きくかけ離れた顔に不敵な笑みを浮かべて

「何を突然………まぁいい、聞いてせいぜい腰を抜かすがいい……ざっと三百歳だ」

律儀に答えた
魔物としてはこの答えで相手が恐怖する姿を楽しむつもりだった
……が、それを聞いた彼は鼻で笑うとその笑いを絶やす事無く構えた

「へぇ、それじゃそろそろ行くぜ……………『若造』!!」

瞬間、彼は眼の前にいた
魔物は驚き、彼の頭があったはずの場所に照準を合わせたまま、発砲
その渇いた音が撃った本人に届くよりも前に彼の指の先に伸びる凶器が銃を持った腕を二分した

流れ出る赤い血

地に堕ちた腕

鼓膜を突き破る様な悲鳴


「……ったく、うっせぇなぁ
  腕の一本や二本や三本で何をそんなに」
「き……貴様ぁ!! よくも、よくもぉぉ!!!」

恐怖と痛みによる絶叫が乾いた空気に響く
銃を失ったその魔物は片腕の腕力で彼を倒そうと向かっていった
彼は軽蔑した目で魔物を見ながらその言葉で『鍵』を紡いだ
解き放たれ、開放された力は彼の周りだけで無く、周囲を巻き込み渦となった

「もうちょっと楽しんでたかったんだが………面倒だ、一気に行くぜ」

その言葉を残すと彼は自分のバイクが置いてある真後ろの小高い丘へと駆けていった
縮地と呼ばれる移動手段を用いる彼にとってそこにたどり着くまで三秒と掛からなかったのだが

 「来たれ焔精 闇の精」

目標を魔物へと定めさらに続ける、それらを無に帰すためのレクイエムを

 「闇を従え 燃え盛れ 常夜の火焔」

そして
 
 「闇の劫火ッ!!」

放った

 

 

 

「確かに被害を気にしなくていいとは言いましたが、そこまでやれと言った憶えはありませんよ」

彼が再び取った携帯から聞こえる言葉には先程よりも静かな、だが深い怒りが込められていた
そして彼はその言葉を、既に風景を元の姿へと戻した街の真ん中で聞き流していた

「だからってイキナリ空間を元に戻す事は無いと思うんだが……」
「空間湾曲の設定時間を言う前に電話を切ったあなたの責任です」
「あのままバトルフィールドごとペシャンコにでもなったらどうするつもりだったんだよ」
「ちゃんとその前にフェンリルで空間の外に出たのだから問題ないでしょう? それよりもうすぐ約束の時間ですよ」

先程まで魔物を圧倒していた彼は口喧嘩の敗北を早々に認めると約束の場所へと再びバイクを走らせた

 

 

 

着いた場所は何処にでもある公園の何処にでもあるベンチ
周りには緑が生い茂り、先程までの地獄絵図とは比較にならないほど生命に満ち溢れていた
そこに腰掛けると視線を向けずに語りかけた

「そこにいるんだろ? ジィさん」
「ふぉっふぉっふぉ……流石じゃの、ヴォルト」

そこに現れたのは後頭部が異様なほどに発達した老人だった
その老人はゆっくりと彼の隣に腰掛けた

「真帆良学園学園長兼関東魔法協会会長か……いつぞやの坊主も偉くなったもんだな、ジィさん」
「ワシより年上のくせに『ジィさん』は無いじゃろうて」
「そういう台詞は俺みたいに不死体になるか、幻術を使ってからほざくんだな」

互いに悪口を言い合うが不思議な事に二人とも笑っていた
これも旧知の仲がなせる業だ
しかし突如彼の顔から笑みが半減した

「ところで、例の件は?」
「無論、計画通り……イヤ、計画以上というべきかの」
「それはそれは、心強いな」
「何しろ、100年越しの計画じゃからのぉ……」

話に一段落着くと、老人は立ち上がり、彼もそれにつられる様に立ち上がった

「では、そろそろ行くかの」

二人は人目の無い茂みに隠れた
老人が言葉の『鍵』を紡ぎ、『扉』を開こうとした
しかし、それが終わる前に彼の言葉がさえぎった

「あ……その前に電話していいか?」
「ん、構わんがあまり長くならんようにな」

彼は身振りで応えながら携帯に番号を打ち込んだ
しばし流れるコール音
その音が相手を呼ぶ中、彼は柄にも無く緊張していた
彼がその理由の考察に思考を向けかけた瞬間、コール音が途切れる

「もしもし、あぁ……アンタが茶々丸さん? 話は聞いてるぜ
  そう、俺だ、ヴォルト・H ・メイゲンだ」

電話に応えたのは若干予想外の人物だったが構わず彼は続けた
 
「……………エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに代わってくれ」

 

 

 

~SSあとがき座談会~

ボ:皆さん ボッヒゃ~、ボヒゃまげです
   『ぱにぽに9巻』限定版に付いてきたおまけが思いのほか豪華だった事にかなり驚いている今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか

ヴォ:ボッヒゃ~、ヴォルト・H・メイゲン………ってまた俺かよ!

しょうがないじゃないですか、この話でもまだメインキャラがあなた以外出てきてないんですから

だったらジィさんを呼べばいいだろ、ジィさんを

だって~、出てきても話す事無いじゃないですか、あの人と

ま、そりゃそうだが………だからって二回連続で俺が出たからって話す事無いぞ?

じゃあ次回予告でもしましょうか
  次回はエヴァが登場(予定)で、エヴァの回想話になります

(予定)って何だよ………

エヴァの過去に何があったのか? ヴォルトとの関係は?
  手に汗握る第三話『美しすぎた笑顔(予定)』請うご期待!

だから(予定)って何だよ
  とにかく次回の座談会は俺じゃないって事だな

ハイ、次回はエヴァ(予定)ですから♪

………………わざとか?

ボ&ヴォ:てなわけで、次回もお楽しみに~


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