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ネギま!クリスマスSS [ネギま!]

皆さん ボッヒゃ~、ボヒゃまげです。
結局さんざっぱら食い尽くした今日この頃、皆さん如何お過ごしでしょうか。

さて、クリスマス企画第二段!
それほど大げさなものでもありませんがw
以前、数騎さんの所にネギまのクリスマスSSを出していたのを思い出しましてね。
久しぶりに見てみたら色々直したい所が見つかったわけです。
そんな訳で、今回はそれのリメイク版を載せようと思います。

でも、どうなんだろう……。
これって無断転載って事になるのかしら?
まぁ、その辺は大丈夫でしょう、多分w

では、長いので続きからどうぞ~。

 

 


12月25日。
今日は一年に一度最も多くの夢が溢れ、幸せが踊る日………そう、クリスマス。
そんな聖なる日の夜遅く、麻帆良学園中等部女子校舎前の道を歩く人影が二つ。
普通、クリスマスの夜に二人きりと聞くと恋人かあるいは仲のいい友達だと思うだろう。

     しかし、この二人は違った。

街頭の光さえ吸い込んでしまいそうな闇に包まれた静寂を打ち破ったのは身長130cm半ばの金髪の少女。

「まったく、ぼーやが誘うから来て見れば全員酔いつぶれやがって………ったく誰だ、飲み物の中に酒混ぜた奴。」

彼女の名前はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、吸血鬼の真祖である。
彼女を形容する言葉は『闇の福音』、『人形使い』、『不死の魔法使い』…………など様々あるが今現在最も相応しい二つ名は恐らくこれだろう。


                 『麻帆良学園中等部2-A出席番号26番』


果てし無くテンションが下がったがそんなことを気にしてはいけない。

「しかしマスターも楽しそうにしていらっしゃいましたが。」

呼びかけに答えたのは彼女をを『マスター』と呼び、耳の突起物が異様に目立つ緑の髪の長身の少女。
膝や肘に無骨なジョイントを有し頭からはいかにもなゼンマイが刺さっている少女……………もとい、機械。
名前は絡繰 茶々丸、ロボットである。
名は体を現すとはよく言ったものだ。
エヴァンジェリンの従者であり麻帆良学園2-A出席番号10番。

 

二人はたった今まで2-Aの教室で行われていたクリスマスパーティーに(ネギに頼み込まれ)出席していた。
だが、クラスの誰かが(恐らく朝倉 和美あたりが)飲み物に酒を混入し、クラスの殆どが酔いつぶれてしまい呆れて帰路に付いたところだ。
100年以上生きている吸血鬼がシャンパン如きで酔う筈も無く、ましてやロボットにアルコールの類が効こうものならここへ持って来い、である。

「フン、お前何を言っている、私はあんな…………………!!」

従者への反論は12月の冷たい風に掻き消され、闇に紛れた。

「……? 如何なさいましたか、マスター。」
「侵入者か、しかしこの魔力は…………おい、茶々丸! お前は装備を整えろ、それと………『アレ』を持って来い。」
「……ハイ、マスター。」

 

 

 

 

 

麻帆良学園、その世界最大規模の学園内に創立当時からあるという世界最大の樹木、通称『世界樹』。
その世界樹の傍の広場『世界樹の丘』にその侵入者はいた。
広場といってもそこはほぼ森に近い。
周りに生えていた木々の何本かは衝撃に耐えかね、なぎ倒されていた。
通常よりやや大きめの杖にまたがっていた、と思われるその侵入者はというと豪快に地面に頭からめり込んでいる。
普通なら即死レベルの怪我をしているのにかかわらずあっさりとこう言い放った。

「あー―――――………………痛っっっっっってー―――。」

そのセリフを言っている当の本人は頭から血が滝のように流れ顔は人間かどうかの判別も不可能な状況で腕はあり得ない方向に曲がっている。
しかしその大怪我人は全く持って平然としている、そして落ちている杖を拾い集中し呟いた。
この極東の島国で使われている言葉とは明らかに異なるラテン語で。

  「メル・リル ラ・ルティル クリスマス」

『始動キー』によって開放された魔力が術者の周りに渦を巻き、

  「治癒の天使よ、我が身体にその祝福を与え、傷を癒す力となれ」

魔力は色を変え、術者の身体に降りかかっていった。
すると頭の血は止まり、顔は美少年と分類されるであろう顔になり、腕は人間本来の形に戻っていた。
これが人間の英知を超えた力であり現実には起こりえないとされている力、すなわち魔法。
それはこの侵入者、もとい少年が魔法使いであるという事実を指し示している。

「あ~、ど~しよ、『扉玉』壊れちゃったよ。これじゃあ仕事が…………!?」

不意にその侵入者は暗がりの中にその背後にまがまがしい殺意を感じ振り返った。
立っていたのは身長130cm半ばの金髪の少女。
乾いた風にブロンドが揺れている。

「貴様、ここで何をしている?」
「何って言われても………このカッコ見てわかんないかな?」
「はぁ?貴様一体何を………」

改めて見ると少年は首周りや袖に白いファーが付いた紅いレザーのオーバーコートに身を包み髪は雪のごとく白い、多少違うがこの格好は、

「まさか貴様、サンタクロースとか言うんじゃないんだろうな?」
「ご名答♪」

紅い服を身にまとった自称サンタクロースは満面の笑みで答えた。
一方、漆いゴスロリ服を身にまとった吸血鬼は唖然とも怒りともつかない顔をしている。

「……で? そのサンタクロースがこの学園に何の用だ?」
「人に尋ねるときはまず自分から、ってのがじょうしきだろ? お嬢ちゃん。」

訂正しよう、吸血鬼は怒りに満ちた顔をしている。

「フフ………聞いて驚け、我が名はエヴァンジェリン・A ・K・マクダウェル『闇の福音』!!」
「エ……エヴァンジェリン!? あの、600万$の!!!?」

次の瞬間には自称サンタクロースは自分の杖にまたがり、いつでも逃走準備OK!といった感じだった。
あくまで準備は、だが

「茶々丸……」
「了解。」

準備から実行に移すより早くエヴァンジェリンの声が闇に響いた。
その瞬間何処からとも無く、周りの闇に溶ける程の漆黒のメイド服に身を包み、超射程ライフルを構えた緑色の髪の少女が浮かんでいた。

「結界弾、発射。」

放たれた弾は空中で破裂し、現れた無数の闇の矢が標的を絡めとる。

「くっ、は………放せぇ!!」
「フフ、この弾は『戒めの風矢』と同じ効果がある………簡単には逃れられんぞ。」
「畜生………っていうか何で日本の学校にエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが居るんだよ!、噂じゃ十年位前に死んだって……」
「『人に尋ねるときはまず自分から』、じゃなかったのか? まず、サンタクロースというのはどういうことだ? たっぷりと聞かせてもらおう。」

軽く相手を蔑むとエヴァンジェリンは身動きがとれない赤服の自称サンタクロースに攻め寄った。

「ん? どうなんだ、サンタさん?」
「……俺は全世界サンタクロース協会、通称『ISO』日本支社23代目サンタクロース、雪条飛鳥…………これで満足か?」
「あぁ、満足………ってそんな訳あるか!!」

軽く乗りツッコミをかまし、動けない相手の胸倉を掴んだ。

「大体何だ、その全世界サンタクロース協会ってのは!!」
「殆ど知られていないが、世界各国にはサンタクロースを養成し、派遣する機関があるんだよ………で、俺はその日本支社の23代目ってわけ。」
「で? 何をするんだ? そのサンタクロースは……………まさか本当にプレゼントを配るわけではあるまい?」
「これだよ」

自称サンタクロース、もとい飛鳥は容積変移魔法をかけた白い大きめの袋から魔力を使って緑色の球を取り出した。

「これは『夢球』と呼ばれる球でこれを寝ている人の枕元に置くんだ。」
「するとどうなる?」
「良い夢が見れたり、次の日気分爽快だったり、軽く願い事がかなったり……………まぁ、人によって効果はいろいろだな。」

飛鳥の意思で球は再び袋に戻った。

「まぁ、昔は本当にプレゼントを配ってたらしいがこのご時世だしな……形が残らない今の形態に落ち着いたってワケだ。」
「なるほどな………で、どうしてそのサンタクロースがこの麻帆良学園にいるんだ?」
「あの、マスターお取り込み中大変申し訳ありませんが……………」

今まで何処にいた? と言わんばかりに存在感が無かった茶々丸がいきなり会話に入り込んだ。

「どうした茶々丸?」
「そろそろ結界弾の効果が………」


「…………もう遅いぜ」


一瞬目を放した二人が再び振り返ったときには既に飛鳥は自由の身になっていた。

「ちっ、お喋りが過ぎたか………茶々丸!!」
「ちょっと待てって、もう逃げねぇよ。」
「………如何いたします? マスター。」
「フン、まぁ別に構わんさ………で、どうして『ここ』にいるんだ?」

そう言いながらエヴァンジェリンは自分の真下、世界樹広場を指差した。

「実は俺今年が初仕事でな、まだ『扉』をうまく使えないんだ………そこでこの『扉玉』を使ってたんだが使い方を間違っちゃって。」
「当たり前だ、『扉』より遥かに簡単とは言え『扉玉』は魔力のコントロールが難しい、貴様ごときに扱える代物ではない。」

飛鳥は軽くため息をつくと少し申し訳なさそうにひびの入った水晶玉くらいの球を出した。

「………で、この『扉玉』が壊れちゃったわけよ。」

エヴァンジェリンの口元にかすかに笑みが浮かんだ。
それは確実に相手を愚弄する笑みだった。

「フッ………それで、どうする気なんだ? 『扉玉』も『扉』も使えないのでは他人の部屋に入ることもままなるまい。」
「そうなんだよなぁ、あとはこの学園だけなんだけど………ちょっと待てよ……」

今度は飛鳥の口元に笑みが浮かんだ。
今度は明暗が浮かんだ時の笑みだった。

「あんた、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだよな?」
「………は? 貴様何を言っている?」

出会い頭ならともかくかれこれ10分以上過ぎているのにこんな質問をされては誰もがこう答えるだろう。
しかし飛鳥がいきなりおかしくなったわけでもないし、ましてエヴァンジェリンが偽者のわけでもない。
となると考えられる可能性は唯一つ。

「まさか、貴様………私に手伝えと言うんじゃないんだろうな?」
「ご名答♪」

エヴァンジェリンは唇を動かさずに呟いた。

「茶々丸。」
「了解。」

ジェット噴射付きの文字通り鉄拳が飛ぶ。

「………ぐはぁああ!!!」

暗闇に鈍い音とともに叫び声が響いた。

「残念だが私は今わけあって魔法が使えんし、元より貴様ごときの頼みを聞くつもりは毛頭無い。」
「は、マジで!? 何で!!?」
「ちょっと厄介な呪いと結界があってな………それがある限り私はただの人間だ。」

飛鳥の口元に再び笑みが浮かんだ。

「貴様! 何が可笑しい!!」
「多分、俺なら解けるぜ………その呪いと結界。」

エヴァンジェリンは自分の耳を疑った、まさか自分が15年かけて解けなかった結界をこの自称サンタクロースが解けると?

「…………茶々丸、今こいつなんて言った?」
「…………マスターの呪いと結界が解ける、と。」
「…………聴覚機能は?」
「異常ありません、完璧です、オールグリーンです。」

いや、そこまで念を押されても………と、いった顔で茶々丸の顔を見つめた。
しかし、いくら見つめたところで飛鳥が言った事は変わらないし、茶々丸の聴覚機能が完璧な事はたった今、嫌と言うほど念を押された。
と、言うことはつまり。

「ほ…………本当に解けるのか? 私の呪いが?」
「だからそう言ってんだろ …………まぁ、一時的にだがな」

エヴァンジェリンの顔から若干笑みが消えたがそれでもまだ喜んでいる顔と言っていい。

「俺たちサンタクロースは夢と自由を売るのが仕事みたいなものだからな、そういうのを解くのは徹底的に修業させられるんだよ。 それに俺達サンタクロースは今日一番魔力が高いんだ。」
「まぁ、そういう事なら………って、結局元に戻っても貴様の手伝いをさせられるだけか………」

喜びが一転、めんどくさそうな顔に変わった。
人間、夢から現実に引き戻されるとこうも一瞬で顔が変わるものだろうか。
イヤ、まぁ人間ではないが。
しかし飛鳥もここで引き下がるわけにはいかない。
何しろこの麻帆良学園総勢五万人以上の夢と笑顔が懸かっているのだ。

「そう言わずに、頼むよ!!」
「そうだな………それなら私と戦って勝ったら頼みを聞いてやってもいいぞ?」

いつの間にかエヴァンジェリンが上から目線になっているがこの際そんな事を気にしている暇は無い。

「よし、分かった…………って『闇の福音』に勝てるわけ無いだろ!」
「安心しろ、ちゃんと手加減はしてやるさ、茶々丸!」
「了解」

茶々丸が何処からとも無く取り出したのは怪しげな紋章が刻み込まれた羅針盤だった。
羅針盤の中央には魔力が渦巻いている。

「この羅針盤を使えば一定区間内において学園結界のみさえぎることが出来る。」
「だったらいっつもソレ使ってればいいんじゃないのか?」
「これは一度使ったら魔力を充填するまで一年かかる上に使用時間が約一時間なんでな、取っておいたんだが今回は使う価値がありそうだ、茶々丸!」
「了解」

茶々丸は広場の中央に羅針盤を置いた。
次の瞬間、羅針盤から魔力が溢れ、一瞬辺りを外界より深い闇が包み込む。
そして気が付くと蒼い半透明の結界の中に三人がいた。

「ほぉ、これが羅針盤とやらの力か…………」

飛鳥の驚きは一秒と続くことは無かった。
何故なら同時に二つのことに気づいたから。
一つはエヴァンジェリンと茶々丸が視界から消えたこと。
もう一つは背後から23発の氷属性の『魔法の射手』が急速に接近していたこと。

「クソッ、いきなりかっ!!」

飛鳥は炎属性の無詠唱『魔法の射手』で5本打ち落とし、15本は自力で避け、残り3本は杖で打ち落とした。
かわしきったという安堵感に浸っていると背後から高笑いが聞こえた。
振り向くとコウモリが寄り集まって出来たマントをひるがえしているエヴァンジェリンと茶々丸が浮いている。

「ハハハ………あの奇襲をかわすとは中々やるじゃないか!」
「『魔法の射手』23本とは、挨拶代わりにしちゃあやりすぎじゃないのか?」
「フン、この程度………挨拶にもならんわ!」

  「リク・ラク ラ・ラック ライラック」

エヴァンジェリンが『始動キー』を唱えるのと同時に飛鳥も構えに入った。

  「メル・リル ラ・ルティル クリスマス」

  「氷の精霊58頭 集い来たりて敵を切り裂け」

(クソッ…………58本かよ)

  「炎の精霊58頭 集い来たりて敵を射て」

通常、魔法を防ぐには対魔法障壁を展開するか同種の反対呪文を放つしかない。
言わずもがな、氷の反対は炎だ。
従って飛鳥は自らの得意とする炎属性の魔法を同じ数だけ呼び出した。

  『魔法の射手 氷の58矢!!』
  『魔法の射手 炎の58矢!!』

二人の放った『魔法の射手』は一本残らず空中で命中した。
立ち込めた煙幕を突き破ったのは既に腕のジェットのハッチを展開し、バーニア全開でパンチの体制に入っている茶々丸だった。

「チッ、コイツがいたか!」

飛鳥は自分の判断力の甘さを恐ろしく呪った。
本来『魔法使いの従者』は魔法詠唱中に完全に無防備になる魔法使いを盾となり剣となり護るのが役目だ。
今まさに茶々丸は剣となって飛鳥に襲い掛かって来ている。

「けど、俺もそれほど甘くないぜ。」
「…………!?」

先程まで100km/時を超えていた茶々丸のパンチが突然空中で止まった。

「マスター、飛鳥さんの魔法障壁はかなり協力です。」
「あぁ、これは少し厄介かもな。 どうやらクリスマスに魔力が最大になるというのは嘘ではないらしい。」

帰還した茶々丸に報告されたエヴァンジェリンは独り言をつぶやいていた。
無論、茶々丸の聴覚機能をもってすれば筒抜けなのは言うまでも無い。
そして同じことを考えている人間がここにも一人。

(やばいな、いくらなんでも二対一は少し厄介だな、こうなったら一か八か………)

飛鳥の視線が茶々丸を捕らえた。
次の瞬間、飛鳥が二人の視界から消えた。
直後、現れたのは茶々丸の目の前。

「な!? 速っ……」

茶々丸の声が突然途切れた。
理由は簡単、飛鳥が放った無詠唱捕縛呪文が彼女を絡め取っていたから。

「貴様………だが、それでは数十秒しか拘束できんぞ!」
「それだけあれば十分!!」

掛け声よりも速く『魔法の射手』がエヴァンジェリンに近づいていた。
しかし、勢い虚しくそれはエヴァンジェリンの脇を掠める。
『魔法の射手』はエヴァンジェリンの背後の結界を燃やしているだけだった。

「中々の奇襲だったが詰めがあま……………」

エヴァンジェリンは突然妙な違和感に気づいた。
そう、自分一人で喋っている事に。
もっと分かり易く言えば飛鳥が消えている事に。
今までのように目の前から、などと言う生易しいものではない。
360°総てから飛鳥が消えた。

「どっ………何処に消えた!?」
「ここだよ♪」

答えは意外なところから返ってきた。
声がしたのはエヴァンジェリンの背後。
先程飛鳥の『魔法の射手』が燃やした結界の壁からだった。

「まさか、炎を媒介とした『扉』………だと!?」

それは危険な賭けであった。
転移に不慣れなものがむやみに使用すれば何処へ出るかは解らない。
だが、彼は賭けに勝った。

 「メル・リル ラ・ルティル クリスマス」

質問に対する答えは『始動キー』で返って来た。
エヴァンジェリンの頭に一瞬の迷いが走る。
詠唱の速い呪文で迎え撃つか、対魔法障壁に魔力を集中するか。

 「来たれ、絶無の焔、貫け!」

決断は後者になった。
最短レベルの詠唱速度を誇る上位古代語魔法に対抗するには今から詠唱していては間に合わない。
かといって無詠唱『魔法の射手』では圧倒的に威力が足りない。
となれば耐え切るしかない。

 「焔の槍!!」

激しい音を立ててエヴァンジェリンの魔法障壁に燃え盛る槍が襲い掛かる。

「ぐぅっ…………くっ!!」

一瞬後にはエヴァンジェリンを炎が襲っていた。
しかし、地面の叩き付けられたエヴァンジェリンの身体は多少の火傷を負っているだけだった。

「ヤバッ、防がれたか!!」

悔しがる飛鳥を尻目にエヴァンリンは高笑いをあげながら叫ぶ。

「フッ………だから言っただろう『詰めが甘い』とな!」
(…………とは言ったが今ので大分魔力を消耗したか…………)

エヴァンジェリンの勘が正しければ恐らくあと一発しか打つことは出来ない。
そして恐らく飛鳥自身もそう感じていた。


「これでとどめだ、若造!!」
「望むところだ、エヴァンジェリン!!」

 「リク・ラク ラ・ラック ライラック」
 「メル・リル ラ・ルティル クリスマス」

二人は持てる魔力の総てを注ぎ込んだ。

 「来れ氷精 闇の精!」
 「来れ炎精 光の精!」

 「闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪」
 「光を放ち 燃え盛れ 暁の灯火」
 『闇の吹雪!!』

漆き氷と、

 『光の業火!!』

白き炎が、衝突した。
完全な反対呪文、そして二人に残っている魔力はほぼ同じ。
お互い一歩も引かず恐らくこのまま勝負はつかない、少なくとも決壊解除モードで自由になった茶々丸のコンピュータはそうはじき出していた。
だが、突然運命の悪戯か一本の閃光がもう一方を押し返した。

「くっ、まさか………!!!」

 

 

 


先程までの激しい魔力の衝突音から一転、辺りは不気味なほど静かだった。
そして倒れている敗者に近寄る勝者の影があった。

「これで、勝ちだぞ………!」

 

 

 

 

 

 


夜も明けかけた麻帆良学園の上空に浮かぶ三つの人影。
一人は紅いオーバーコートをまとった白髪の少年、一人は漆黒のメイド服をまとった緑髪のロボット、そしてもう一人は、

「おい、貴様! 確かに手伝うとは言ったがこんなカッコをするとは聞いてないぞ!」

金色の長髪に真紅のミニスカサンタコスプレ服をまとった身長130cm半ばの少女。

「まぁまぁそう言わずに、結構似合ってるぜ♪」
「マスター、私から見ても非常に似合っていると思いますが………」

照れているのか本当にいやなのか、はたまた単に寒いからか、エヴァンジェリンは小刻みに震えていた。

「茶々丸、お前まで………」
「でも、これで仕事も終わったんだからよかったっつー事で、さすが『闇の福音』!」

頬を服よりも赤く染めているエヴァンジェリンを適当に持ち上げながら飛鳥は帰り支度を済ませていた。

「じゃぁ俺はこれで……………」
「ちょっと待て、貴様。」

飛鳥は急に寒気を覚えた。
寒風によるものかとも思ったがどうやら違うらしい。
気が付けば最強レベルの殺気が背中に突き刺さっていた。

「ここまで私をコケにしておいてまさか無事に帰れると思っているわけではあるまい?」
「え!!? 何を言って…………」
「茶々丸」
「了解」

飛鳥の問いは完全に無視されたまま茶々丸のもったライフルの照準は飛鳥を捕らえていた。

 

12月25日。
今日は一年に一度最も多くの夢が溢れ、幸せが踊る日………そう、クリスマス。
…………若干一名の不幸なサンタクロースを除いて。

「行くぞ! 覚悟しろ!!!」
「助けてー――――――――!!!」


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コメント 4

^^

メリークリスましまろ!
by ^^ (2006-12-25 01:16) 

^^

確かにサンタクロースはかわいそうだな。
サンタの公式ホームページがハッキングされたらしい。
by ^^ (2006-12-25 02:48) 

ボヒゃまげ

メリークリスまほら!

サンタのHPハックして何の得があるんでしょうかね?w
by ボヒゃまげ (2006-12-26 00:35) 

数騎

管理してるのはこっちだけど作者はそっちだから
別に気にしなくていいよ
by 数騎 (2006-12-26 10:51) 

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